Existence *
「凄く良かったよ。向こうでさ色んな事学べたし、仲良くなった子もいたし楽しかったよ」


楽しそうに口を開く美咲に行かせて良かったって改めて思う。

美咲の喜んで帰ってきたその表情を見ると、俺の事はもちろん。

美咲のお母さんが入院したことも、絶対に言えないような気がした。


隠してることがいい事ではないけど、美咲の表情を見てると、どうしても言えなかった。


「そっか。それは良かったな」

「うん。行けたのは皆のお陰だけど」

「うん」

「翔には感謝してる。お金だって助けてもらったのに、まだ私は何も返せてないし…だからこれから何か恩返しする」

「つか、恩返しって…」


…なんだよそれ。

思わず苦笑いになる。

ほんと、そう言うところは昔っから何も変わってねぇな。


「だってそうじゃん」

「俺じゃなくお母さんにしろよ」

「あーママか…」

「美咲から連絡あんましねぇから心配ばっかしてたぞ」

「あー…うん」

「ちょくちょく顔出してたけどさ、絶対お前の事聞いてきてたし。なのに俺もお前の事何も知んねぇ状態だったし」

「ご、ごめん…」

「まーでも元気だったぞ」

「ありがとう。そんなにママに会いに行ってくれてたの?」

「んー…って言っても、よく行くのはここ最近だけど。ホスト辞めるまで忙しかったし」

「あー…そっか」


3月までは本当に忙しくて会いに行く時間もなかなかなかった。

むしろ仕事一筋で無我夢中で寝るのを惜しんでやってきた5年間だった。

入院後も必死で毎日やってきた。


そうしてないと、美咲を思い出すから。

なんて、馬鹿らしくて言えないけど。


辞めてからトビの仕事と両立に、この先の事を考えながら仕事の勉強をずっとしてて、その合間を見つけてお母さんの所に顔を出していた。
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