Existence *
「あ、けど葵ちゃんが毎日のように行ってたぞ。…子供連れて」

「え、誰の?」

「え?」


驚く美咲の声に俺は必然的にチラッと顔を向ける。

美咲は目を見開いて俺をジッと見つめ、その表情を見てすぐに俺は前方に顔を向けた。


「だからさっき言ったじゃん」

「あれ?お前聞いてねぇの?葵ちゃんの子供じゃん」

「…は?」


何がなんだか分からないような声と表情をする美咲に俺までもが逆に驚いてしまった。

え、もしかして知らなかったのか?


「つかマジ聞いてねぇのかよ。もしかして葵ちゃんともあんまり連絡してなかった?」

「うん。翔よりも全く連絡してなかった」


俺より連絡してねぇって、なにそれ。

もうほぼ5年間、連絡してねぇみたいなもんじゃねぇかよ。

俺とすらあんまりしてねぇのに。


「マジかよ。俺はてっきり聞いてると思ったけど。今、2歳だけど。あ、もうすぐ3歳か」

「はぁ?嘘でしょ?」


びっくりする美咲の声が反響する。

つか、こっちが嘘だろって言いたくなる。

知らなかったことに、マジかよって思う事すらなくて。


「ま、そー言う事だから」

「つか、もしかして諒ちゃんの子供?」

「あぁ」


じゃなきゃ誰の子供だよって思いたくなる。

未だに美咲は戸惑ってて、困ったように手で額を覆って、深いため息を吐き出した。


「なんか居ない間の世界が違う…」


ポツリと呟いた美咲はもう一度ため息を吐き捨てて、崩れる様に深くシートに背をつけた。


「だから美咲が連絡しねぇからだろ」

「だって知ってる?海外から日本じゃ、通話代ものすごくかかるんだよ?1分何百円って料金取られるんだよ?」

「また金?」

「だってそーじゃん」

「つか別にいいだろ。俺の名義なんだから」

「…あ、」

「だから別に心配する事もねぇのに」


なんか漸くここで分かったような気がした。

美咲が掛けてこなかった理由。

海外と日本の通話代ってか?

ほんと、それに俺は負けたって事か。


なんかなー…

全然嬉しくもねぇわ。
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