君が大人になった時、もしまだ俺のことが好きだったなら・・・
数日後―ーー。


「小林さん。どうして君がここにいるんだ?」
小声で、小林さんに話しかけた。

小林さんは補習している教室の1番前の席に座っていた。
自由席で皆、後方の席を陣取っている中、一人ポツンと最前列。

1学期末の成績が悪かった生徒は補習授業を受けなくてはならないのだが、小林さんの数学の成績は悪くない。
流石に進学クラスに比べたら悪いが、スポーツ科だけでなく、普通科と合わせてもいい方だった。


「はぁ」
と溜め息をついて、話しかける。

「どうして、小林さんがいるのかと聞いている」
「だって、はっちゃんが一人で寂しいって言うから」

「はっちゃんってだれだよ?」
「三橋さん。
みつはっちゃんで、はっちゃんだよ。
え?あんなに話してるのに知らなかったの?」

「三橋さんは知ってるよ。
はっちゃんは知らない。
あだ名なんて知るわけがない」

補習に参加している生徒に目をやる。
しかしそこには三橋さんの顔は見当たらなかった。

「…来てないな」
「そーなの。おかしいよね。
はっちゃん、遅刻かな?」

「大体、小林さんは赤点じゃなかっただろ?」
「そうなんだけど。今回ギリギリだったんだよねー」

「んー、そうだったか?」
「うん!そうだった!」

小林さんの点数はそこまで悪くなかったはずだ。しかし授業中に爆睡していたことは思い出した。

「まあ、授業中イビキかいて寝てたもんな」
「は?イビキなんてかいてないし」

「かいてたよ」
「うそだ!」

「うそじゃないから」
「それと、叫ぶんじゃないよ」

ぶうっと頬を膨らませる小林をみて、フフッと笑いが漏れる。

「まあー。しゃあねえなあ。じゃ、参加していいよ」
「わーい。ありがとう!」


人の気も知らないで、呑気なもんだなぁ。
複雑な感情に蓋をして、小さく息を一つついた。
教卓に戻って、授業資料を開く。
「はーい。では始めますねー」



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