クリームソーダだけがおいしくなる魔法
半月に1度は必ず会う約束をしていた。
今回は私の勤務する会社にほど近い飯田橋駅から歩いて5分ほどの喫茶店にした。東京大神宮のある通りだ。
秋の陽は紅葉したイチョウと同じ金色をしてビル群の向こうへと息をひそめ、頬の産毛がそそけだつひやりとした夜は総武線の方からやってきた。
古い雑居ビルの1階にあるこの喫茶店は夕方になるとビストロノミーになる。淡いウイスキーの色をしたランプを灯し、おいしくてカジュアルかつ手頃なフランス料理を出すが、喫茶店としてのメニューも出してくれる。カスタマイズ好きの日本らしい柔軟な対応をしてくれる店だった。
あめ色のついたての向こうの奥のテーブル席にいるから彼はすぐには私に気づかないかな、と思ったが、彼は迷いもせずにこちらに来て「やぁ」と控えめな笑みを見せた。一度家に帰って着替えてきたのだろうか、それとも駅かネットカフェでだろうか。右腕に茶色のステンカラーコートをかけ、白いワイシャツに斜めストライプの赤くて細いネクタイを合わせ、藤色のVネックのセーターに緑がかってくすんだ茶色のスラックス、茶色のこなれた革靴と言う格好だった。会社へ行くときは上げている前髪はおろしている。つややかな黒髪が重めだが、ぱっちりとした二重の目がその重さを感じさせない。長身でやや細身、静の匂いがする色白で頬と唇がうす赤い正統派美青年だった。
会社を出るときに髪を下ろしてとかし、メイクをし直しただけで来てしまった自分が恥ずかしい。リクルートスーツみたいな黒いスーツだし。香水はつけなおしてきたけれど。
「今日も会ったって証拠写真撮るか」
今回は私の勤務する会社にほど近い飯田橋駅から歩いて5分ほどの喫茶店にした。東京大神宮のある通りだ。
秋の陽は紅葉したイチョウと同じ金色をしてビル群の向こうへと息をひそめ、頬の産毛がそそけだつひやりとした夜は総武線の方からやってきた。
古い雑居ビルの1階にあるこの喫茶店は夕方になるとビストロノミーになる。淡いウイスキーの色をしたランプを灯し、おいしくてカジュアルかつ手頃なフランス料理を出すが、喫茶店としてのメニューも出してくれる。カスタマイズ好きの日本らしい柔軟な対応をしてくれる店だった。
あめ色のついたての向こうの奥のテーブル席にいるから彼はすぐには私に気づかないかな、と思ったが、彼は迷いもせずにこちらに来て「やぁ」と控えめな笑みを見せた。一度家に帰って着替えてきたのだろうか、それとも駅かネットカフェでだろうか。右腕に茶色のステンカラーコートをかけ、白いワイシャツに斜めストライプの赤くて細いネクタイを合わせ、藤色のVネックのセーターに緑がかってくすんだ茶色のスラックス、茶色のこなれた革靴と言う格好だった。会社へ行くときは上げている前髪はおろしている。つややかな黒髪が重めだが、ぱっちりとした二重の目がその重さを感じさせない。長身でやや細身、静の匂いがする色白で頬と唇がうす赤い正統派美青年だった。
会社を出るときに髪を下ろしてとかし、メイクをし直しただけで来てしまった自分が恥ずかしい。リクルートスーツみたいな黒いスーツだし。香水はつけなおしてきたけれど。
「今日も会ったって証拠写真撮るか」