花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
プロローグ

プロローグ

「川瀬《かわせ》のやつ、顔はいいのに。無駄だよな」
「だよな。ちっとも笑わねえし」
「あれで彼氏いたら俺パレスチナに行ってもいいわ」
「三途《さんず》の花《はな》なだけにな。……っておまえが三途の川を渡ってどうする」
「ははは」

 だべる同期たちの話にちっとも笑えない。
 好きな人を悪く言われるのは気分が悪い。

「そうか。きみたちには川瀬花子(はなこ)ちゃんの魅力が分からないんだね。ま、僕ひとりが知っていればいいんだけど」

 言ってやりたいのはやまやまではあるが。

「プログラミングの腕は確かだけどね」
「お。神宮寺《じんぐうじ》に言われると説得力増すなぁ。けどあいつつんけんしてんぞ」
「だよな。コバが勝手に一人で作っちまうから困るってこぼしてたぞ」
「まー、コバは遅れてる文系だしなぁ」
「おまえに言われたかねえよ」

 そこもまぁ、彼女の魅力ではあるけど。
 こんな酒の場で打ち明けるのは勿体ない。――僕だけの秘密。

 新橋の歓楽街の一角を構えるこの居酒屋には、僕たちみたいな会社員がわんさかいて、みな同じように酔い、同じように安酒を食らう。

 三途の花。
 そう揶揄されるあの子の本性を知るのはこの世で――僕だけ。
< 1 / 39 >

この作品をシェア

pagetop