花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
「久しぶりやねえ。あんさんのことはよう覚えておるわ」

 頭の禿げあがった中年男性が微笑みかける。いかにもひとがよさそうだ。

「二泊三日の合宿つうがは、当時のあんさんみたいな、小さい子にはなかなかしんどかったはずやけど。あんさんは読経も掃除も文句ひとつ言わずにやり遂げた。毎年わたしらはこの集まりをするげけど、子どもが来てもそこの海で遊んでおるのが普通やってん。携帯もいじらんし変わった子やなと。十五年前のことなんに昨日のことのように覚えておるわ」

 場所を移し、近くのカフェで、当時合宿を主催したメンバーのかたのひとりにお会いしている。

「……私と、理生や禅雨はどんな様子でしたか?」

「覚えておらんがか? ……篠塚(しのづか)さんから、すこし話は聞いておるげけど……」

 突然訪問して昔の話を聞かせて欲しいだなんて。先方からすれば違和感のある話だから、記憶が欠落している旨は正直に伝えて欲しいとアユちゃんに話した。アユちゃんも、驚いた様子だった。

「その後震災のショックで、それ以前の記憶が一部消えてしまいまして。理生と私は仲のよい様子でしたか?」
< 130 / 259 >

この作品をシェア

pagetop