花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 僕たちを引き裂いた無常なる運命を憎んで。この合宿で初めて恋乃と会って、……いっそここからずっと入れ替わってしまえたらなんて考えたこと。
 
 全部、あぶくとなって消えていく。そのとき、突然、僕のなかに、激しい欲望が訪れる。

 ――死にたくない。

 いやだ。こんなところで死ぬのはいやだ。やり残したことがたくさんある。もっともっとモテて、女の子を侍らせて、それからいちゃいちゃして……。

 こんなところで神宮寺恋生が死んでどうする。誰が喜ぶ。母の、父の、兄妹の顔が思い出される。僕がここで溺れて死んだら悲しむひとがいる。そんなことは許されない。許せない。

 戦え。

 しぼみかけた生への欲望が急に目覚め、僕は、夢中で手を動かした。足をばたつかせ、必死に泳いだ。

 手ごたえを感じたのは、僕の指の先に感触があったからであった。

「――理生!」決死の形相。こんなにもきみは僕を求めてくれている。「理生! お願い! こっちまで来て!」

 見れば大人たちが集まっている。陸があんなにも遠く見えたのに。きみは浮き輪を投げてよこしてくれた。僕はそれに捕まり、必死に泳いでどうにか無事に生還した。
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