花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 *

「……恥ずかしながら、大人どもはこの行事に慣れ切っておってな。油断しておってん。まさか、海で溺れる子がおるなんて、ひとりも考えておらんかった。酒の回っておるメンバーもおったさけ。

 そこに、あんさんが大人たちに、なにをしておるが! と呼びかけて、慌てて、大人は浮き輪を持って、溺れている理生ちゃんのところに行ってん。ほんでもまだ、酒が回っておってのんびりしておるメンバーもおったところに、あんさんが怒鳴りつけて。浮き輪を投げて、理生ちゃんが捕まったところを、あんさんが、……小さいからだなんにどこからそんな力が出るがかね。理生ちゃんを引っ張り上げて、そこに大人が入って、大きなかぶの絵本みたいになぁ。理生ちゃんを引いて、どうにか……理生ちゃんは九死に一生を得てん」

 指先を見つめる。かつて、恋生の危機に気づき、真っ先に駆けつけて、助けようとした、この指を。手を。
 
 ――死にたくない!

 突然電気が落ちる。激しい揺れ。正気を保っていられないほどの地震に、眩暈がして、それでも、死にたくない、という感情が真っ先に訪れた。柱にしがみついて揺れを堪えた。

 ああ。この衝動を、あなたは、感じたんだね……恋生……。
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