花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~

Phase 1

「らららららららー、らぁー、ら、ららら」
 すぐそこの台所に立つ恋生のエプロン姿。エプロンが不格好に可愛くてなんだか高校生の調理実習みたいだ。童顔なのも相まって。
「ご機嫌だね」と話しかける。「宇多田ヒカルの『First Love』だっけ、それ」
 おたまを手にして振り返った恋生は目を丸くして、
「本当に、……川瀬さんなにも覚えていないんだね」
「なんのこと?」
「いまはいい。……横になって。読書もほどほどに。目が疲れない程度にね」
 まるでお母さんだ。「分かりました。ママ」
「花子。ご飯もうすぐ出来るからね」
 びっくりした。女の声も出せるのか。本気で女が喋っているのかと思った。
 既に前を向いて調理を再開したかに見えた神宮寺くんは、目を合わせると微笑み、
「ご飯は花子の大好きな卵のおかゆだからね」

 駅で倒れた日。神宮寺くんが何故かその場にいて私を介抱してくれた。気分がよくなるまで駅員室で休む私に付き添ってくれた。仕事は? と聞くとそんなものはいい、と、冷たくなった私の手を握って温めてくれた。
< 20 / 39 >

この作品をシェア

pagetop