花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 テレビで見た映像が後付けをする。あの頃、平常心でいられたひとは誰一人とていない。揺れがすさまじかったことはからだが記憶しているし、どこでどうしてたかまでは正確には思い出せないが、とんでもない出来事が起きてしまった。そのことが、のちの報道を通じて知れた。

 恋生と出会っていたとしたら、その前なのだろうか。会社で会ったのが初対面だったら、あんな含みを持たせた言い方はしないはず。恋生のことだから。

(だったらいつ……)

 そうだな。コーヒーを飲み終え、お会計を済ませ、店を出ると、外の雨があがったことを確認し、スマートフォンを取り出して連絡先を開き通話を押す。

 気が進まないから避けていた。

 パンドラの箱は開くためにあるのだ。

 相手はすぐに電話に出た。なので返す。「ご無沙汰しています。お母さん」

 嬉しそうな母の声。方言が強い。相変わらず、私のことをこうと決めつける性格は健在で。緑川にいたころの私がすべてではないのに。母はいつも、花ちゃんはこうやからと決めつけるのだ。
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