花に溺れ恋に純情~僕様同期御曹司の愛が私を捕らえて離さない~
 それが嫌いで出て行った。ということを母は知らない。

 近所の坂田さんとこにまーた子どもが産まれて、と世間話をし始める母。聞いてやろう。ひとまず。いまのところは。

 母とこうして話すのはもう、二年ぶりなのだから。積もる話もあるだろう。

 三十三分間母の話を聞き終えた私は静かに切り出す。「お母さん。あのね。私の小さい頃の写真とか残っていたら全部……送って欲しいの。住所あとで送るから」

「写真な。ぜーんぶお母さんとっておるげよ。花ちゃんの小さい頃のとかぜぇんぶなぁ……」電話越しの母の声に宿る湿り気のある感情。「大学の頃のまで大事に取っておったさけ、すこしずつ送るわ」

「着払いでいい。全部送って欲しい」

 戸惑ったような母の声。「……段ボール何箱になるか分からんけど、それでもいいが?」

「お願い。確かめたいことがあるの」

「分かったわ。時間指定したほうがええわね。ほしたら花ちゃん何時ごろならおる?」
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