シンデレラは豪雨の中で拾われる
 朝礼が終わり、周りに声を掛けてからオフィスを出た。
 足を震わせながら会議室に向かい、ノックをしてから扉を開けると、その先には社長と役員全員が揃っていた。

(え、なんでなんでなんで…普段は本社にいらっしゃる社長がどうしてここに、)

 社長と役員全員の集合だなんて、よっぽどのことをやってしまったのだろうか。ちなみに考えてみたが、全く心当たりはなかった。それが恐怖を煽って仕方ない。

「ああ、佐々木さん。朝から呼び出してすまないね。座ってもらっていいかい?」
「はい」

 社長の言葉に従い座る。緊張で震えてしまうが、よくよく見ると社長や役員の表情は柔らかい。
 あれ、もしかして悪い話ではないのでは…?
 
「そんなに緊張しないでくれ。今からの話は決して悪い話ではないよ」

 私の心を読んだように、社長は頷いた。そして、言葉を続けた。
 
「佐々木さん。君には『レグロレルス株式会社』との合同プロジェクトの資料作成を、中心となってやってもらいたい」

 社長の言葉に、私は思わず息を飲んだ。

「レグロレルス株式会社、ですか?」
「ああ。君も知っていると思うが、近年急成長している業界きっての期待の星だ。特に代表取締役は若くして凄腕で、業界ではちょっとした有名人だよ」

 社長はその言葉と共に、分厚いファイルを手渡してきた。表紙には、見覚えのあるロゴと、会社の名前が印刷されている。
 『レグロレルス株式会社』については、もちろん知っている。というか、この業界に勤めて、レグロレルス株式会社の名前を知らない人はいないと思う。それほどまでの大手なのだ。
 だから尚更分からない。どうしてこの会社に、それも地方の支社にいる私にそんな話が振られたのだろうか。
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