推しで一途な婚約者は、国一番の人気者!つまり毎日が修羅場です。

3章「vs麗しきご令嬢」_3話:ファラデウスの花祭り

緑豊かなファラデウス国。
8つの領主や族長が手を組み、建国された。
あらゆる種族が暮らすこの国では、四季折々の伝統的な行事や国際的に有名なイベントなど、1年を通してあらゆる祭りが開催される。

その1つが花祭り。
雪の下から花が顔を除く時期に行われることから、名付けられた祭り期間。春到来を喜び、国中でパーティーや催し、マーケットが開かれるのだ。
中でも華やかなのは、中央区貴族たちが開くパーティーである。春を思わせる明るい色の衣装や飾りで身を包み、冬の間に確保した豪華な食材を招待客に振る舞うのだ。
特にファラデウスの政治代表で、かつ中央区を治めるローランド公主催の夜会は、3夜に分けて開かれて、貴族や軍将校ら、国を代表する経営者などが招待される。共にファラデウスをまとめる区公らも集まる。東区、西区、東南区、西南区、北区、北山間区、南山間区…そして中央区の8人が集う。普段なら招待されても姿を見せない公も、年に一度のこの夜会だけは必ず出席する。つまりファラデウス特別八公とも対面できる貴重なパーティーだ。
アンジュは西区ー一家はずっとブルナー領と言っているが、ファラデウス国の表記では西区が正しいーのブルナー家の末娘、召喚公の妹。つまり夜会に出る権利を持ち、ローランド公からも毎年誘われている。
アンジュの婚約者であるアルフレードも、一緒に出席することができるのだ。

「普段と違った装いに身を包んだ2人が、煌びやかなパーティーで踊り、話に花を咲かせる。注目を浴びる恋人に独占欲を抱き、スマートにエスコートする姿に惚れ直す…。これぞ乙女が夢見る恋人イベントであろう!」

恋愛小説でパーティーと言えばイベント発生は必須だと、鼻息荒くサーラは語る。
つまり、サーラは2人で夜会に出席しろと言っているのである。

「アンジュ、確か今回は出席するんじゃなかった?」

「うん。予定通り、問題が起こらなければ第3夜に出席する予定だよ」

ビアンカの問いに、アンジュは頷いた。
問題、というのは他から邪魔される懸念である。
1つ目は人の妨害。婚約後初めて迎えた花祭りは、アンジュをよく思わない人によって妨害されてしまい、アルフレードと参加できなかった。
2つ目は、軍の任務についてだ。花祭りは大陸中から観光客がやってくることもあり、軍の警備はより厳重なものとなる。ローランド公主催の夜会は一堂に国の上流階級者や有名人が集まる。中央区の警備をより強固なものにするため、この3日間は配属地区関係なしに警備担当が組まれる。
半年前から予定が組まれ、散々調節して1ヶ月前に担当が決まる。その年パーティーに参加できるかは、この担当日程が合うかにもかかってくるのだ。
今年はアンジュが所属するウィリアム班も、アルフレードが所属するエゼリオ班も、主要警備担当からは外れた。運良く空き時間も重なり、アルフレードと共に出席する予定だ。

「それは楽しみね!夜会服も、もちろん一新しているんでしょう?」

ビアンカも夫と共に、第1夜に出席する。国の医療や薬学の発展に貢献しているリエヒティ家、現当主である彼女の母親が公の場に出るのが苦手なためビアンカが担っているのだ。存分にオシャレを楽しめ、美味しい料理に情報も探れるパーティーはビアンカには有意義な時間だ。何より、パーティーに参加すれば最推しである、ローランド公のご子息と婚約者の隣国の姫とお会いできる機会が増えるのだ。出ない選択が、ない。

「うん。あと少し時間はかかるけど。でね!アルフレードのタキシードが最高な品が出来そうなんだ!!」

男性から女性にドレスを贈るのが通例だが、今回はアルフレードの次兄の婚約者・ロベアタの提案に乗り、アンジュがアルフレードのタキシードを手掛けることになった。アルフレードの母も未来の義娘たちに混ざり、夫に贈ることにした。

『呼ばれているのはアンジュでしょ?そのパートナーでアルフレードは出席するんだし、軍の儀礼服ではなくタキシードでも平気だよ。…アルフレードのタキシード姿、みたいでしょ?』

ロベアタの提案は実に魅力的であった。彼女もずっと同じ

(アルフレードの、推しのコーデを手掛けられる!)

恐れ多くもあるが、滅多にない機会だ。
アンジュにとって相手に服を贈るなど初めてのことで、デザイナーやトゥーダ、ロベアタと相談しながら、デザインを考えていく。ブルナー家お抱えの優秀なお針子さんも全面協力が約束されており、アルフレードにピッタリ似合う最高なタキシードが出来上がる予定だ。もちろん、アンジュのドレスもである。

「アンジュのドレス姿見れるなら、私も出席者しようかなぁ…なんてね」

「あら。ララだって毎年招待受けてるんでしょ?サーラだって」

ララもウェンガー家の跡取りだ。祖父母も高齢になっており、代わりにパーティーの出席しないかと手紙が届いているのだ。
頬杖をつきながら、細長いスティック状のクッキーを器用に頬張っていたララは、腕を組むと「うーん…」と一巡する。

「だけどなぁ。相手もいないし」

パーティーは1人での参加も問題ないが、年頃の女性が1人で夜会に出ると色々と面倒が起こる。避けるには誰かを伴えば良いのだが、ララには婚約者や恋人がいないため誰かに頼まなければならない。それが億劫なのだ。

「相手ねぇ」

「相手、ねぇ」

「ねぇ?」

「なによ!」

意味深に笑う3人に、ララは頬をふくらませる。ほんのりと頬が赤くなっているのは、たまたまか、それとも…。

「私のことは置いといて。サーラは、どうするの」

ララは話をサーラに振る。実にわかりやすい話題転換だ。
サーラも神聖守護団の聖騎士の中でも、検挙率や保護率の成績はトップ5に入る。若手ながら非常に優秀なのだ。神聖守護団からも毎年数人呼ばれることから、サーラも選ばれているに違いないと、ララは踏んだのだ。
案の定、サーラはしっかり頷いた。

「私か?うむ出席するぞ、呼んでいただけたからな。ただなぁ…アンジュが第3夜なら他の夜にしようかな」

「え、なんで?」

「私の目的はロマンス見学だからな。見られてたらイチャイチャしにくいだろ?次回は間近で堪能させてもらうから、今年は存分に羽目を外すんだな!」

サーラ・ローサ18歳。どんな時も己を貫く、彼女の誉高い恋愛脳に光あれ。

「すごい台詞」

「ブレないなぁ」

「ふふふふふ。ま、今年は安心して参加できそうじゃない」

夜会服も、出席の予定も順調だ。過去2回、理想を叶えられなかったアンジュとアルフレードを思えば、今年は無事に出席できそうなことにビアンカは安心した。


だが。


「…悩み、聞いてもらっても良い?」

そうならないのが、アンジュとアルフレードである。
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