推しで一途な婚約者は、国一番の人気者!つまり毎日が修羅場です。
3章「vs麗しきご令嬢」_4話:堂々発言
年明けからの出来事だ。
ポエテランジュ9番目の子・ヌフが寂しさを爆発させ、アンジュの元に精霊たちが集まっていた日頃。
花祭りが開かれるにあたり、少しずつ忙しさが増しつつあった。そんな時ほど何故か、問題は積み重なりがち。誰にしも覚えはあるだろう。
『貴女がアンジュ・ブルナー?』
初めて彼女と会ったのは、夜会で着るドレスとタキシードの打ち合わせをした帰り道。中央区の4番地域にあるデザイナーの事務所から、縫製職人を駅まで送り届けたアンジュ。のんびりと買い物でもして借家に帰ろうとしたところで、1人の女性に声をかけられたのだ。
背がすらりと高く、輝きのリングが浮かぶ美しい黒色の髪に、澄んだ青い瞳が目の引く女性。自身の美しさを理解している、適度に肌の出た服と、メイクを施している。余裕を持った、大人の女性と表現すべき完璧さ。言葉遣いと立ち振る舞いから、上流階級出身か相応な教育を受けた女性だと伺えた。
貴族ならば過去にあったことがあるかと記憶を遡ろうとした瞬間。
『私、アルフレード様と関係を持ってるの』
『失礼ですが貴女になど、アルフレードの興味を引きません』
女性の堂々発言に、アンジュはすぐに言葉を重ねて否定する。脊髄反射である。アルフレードの性格上、絶対に肉体関係だけの相手などありえない。もし一晩の間違いがあるならば、アンジュとの婚約は破棄してすぐに結婚しているに違いない。彼を想うならば、すぐに気づく基本的な事だ。そんなことすら分からないのか。
怒る部分が違っているように思うが、とにかく憤りを感じたアンジュは女性の言い分を信じなかった。今までもアルフレードとアンジュを別れさせようと、無茶苦茶な言い分をふっかけてくる女性は多数いた。アンジュはいつも通りだと踵を返し、女性を置いて足早に立ち去った。
気持ちは悪くなったが、蚊に刺された程度だと無視することにした。
だが。
その女性は幾度とアンジュの目の前に現れては、彼女とアルフレードのロマンスを語り聞かせてくるのだ。
『私がアルフレードの本当の婚約者よ!』
過去、似た発言をする女性たちはいたが、詳細を確認すればすぐにボロが出た。しかし今回、人に話すにはあまりに破廉恥がすぎる内容に、彼女の話すアルフレードの特徴はアンジュが知っているものに酷似していた。
最初は妄想だと相手にしなかったアンジュも、繰り広げられるやたら具体的な内容には耳を傾けなければならなくなった。
『貴方、本当にアルフレード様と釣り合っていて?』
『本当に彼を想うならば、身を引くのが常識ではなくて?』
『貴方みたいなちんちくりんが、彼のタイプだと信じているなら可哀想だわ』
『アルフレード様もどうしてまだ化け物に夢を見させているのかしら』
婚約者と相引きしていると白昼堂々語る相手に、常識を問われてしまう。
流石のアンジュも文句の一つ言いたくなったが、言葉を飲み込み我慢した。悪役になると決めたならば、もっと憎たらしく、図々しい発言を徹底すべきだが、化け目歴をはじめたばかりのアンジュには難しい。
それに相手を黙らせて仕舞えば情報は取れない。気持ちよく話している今が、絶好のチャンスなのだ。
『貴女がどう言おうと、彼の婚約者は私ですから』
相手が今日の分を言い終わったタイミングを見計らい、一言だけアンジュは返す。牽制程度であっても、強い眼光に気後れした令嬢は立ち去っていくのだから中途半端にも程がある。
それでも明日も、タイミングを見計らってはやってくるに違いない。
『はぁ…どうしよう』
これ以上は無視するだけは得策ではない。
彼女と関係を持っている"アルフレード”について本格的に探りを入れなければならないと、アンジュは考えを改めることにした。
ポエテランジュ9番目の子・ヌフが寂しさを爆発させ、アンジュの元に精霊たちが集まっていた日頃。
花祭りが開かれるにあたり、少しずつ忙しさが増しつつあった。そんな時ほど何故か、問題は積み重なりがち。誰にしも覚えはあるだろう。
『貴女がアンジュ・ブルナー?』
初めて彼女と会ったのは、夜会で着るドレスとタキシードの打ち合わせをした帰り道。中央区の4番地域にあるデザイナーの事務所から、縫製職人を駅まで送り届けたアンジュ。のんびりと買い物でもして借家に帰ろうとしたところで、1人の女性に声をかけられたのだ。
背がすらりと高く、輝きのリングが浮かぶ美しい黒色の髪に、澄んだ青い瞳が目の引く女性。自身の美しさを理解している、適度に肌の出た服と、メイクを施している。余裕を持った、大人の女性と表現すべき完璧さ。言葉遣いと立ち振る舞いから、上流階級出身か相応な教育を受けた女性だと伺えた。
貴族ならば過去にあったことがあるかと記憶を遡ろうとした瞬間。
『私、アルフレード様と関係を持ってるの』
『失礼ですが貴女になど、アルフレードの興味を引きません』
女性の堂々発言に、アンジュはすぐに言葉を重ねて否定する。脊髄反射である。アルフレードの性格上、絶対に肉体関係だけの相手などありえない。もし一晩の間違いがあるならば、アンジュとの婚約は破棄してすぐに結婚しているに違いない。彼を想うならば、すぐに気づく基本的な事だ。そんなことすら分からないのか。
怒る部分が違っているように思うが、とにかく憤りを感じたアンジュは女性の言い分を信じなかった。今までもアルフレードとアンジュを別れさせようと、無茶苦茶な言い分をふっかけてくる女性は多数いた。アンジュはいつも通りだと踵を返し、女性を置いて足早に立ち去った。
気持ちは悪くなったが、蚊に刺された程度だと無視することにした。
だが。
その女性は幾度とアンジュの目の前に現れては、彼女とアルフレードのロマンスを語り聞かせてくるのだ。
『私がアルフレードの本当の婚約者よ!』
過去、似た発言をする女性たちはいたが、詳細を確認すればすぐにボロが出た。しかし今回、人に話すにはあまりに破廉恥がすぎる内容に、彼女の話すアルフレードの特徴はアンジュが知っているものに酷似していた。
最初は妄想だと相手にしなかったアンジュも、繰り広げられるやたら具体的な内容には耳を傾けなければならなくなった。
『貴方、本当にアルフレード様と釣り合っていて?』
『本当に彼を想うならば、身を引くのが常識ではなくて?』
『貴方みたいなちんちくりんが、彼のタイプだと信じているなら可哀想だわ』
『アルフレード様もどうしてまだ化け物に夢を見させているのかしら』
婚約者と相引きしていると白昼堂々語る相手に、常識を問われてしまう。
流石のアンジュも文句の一つ言いたくなったが、言葉を飲み込み我慢した。悪役になると決めたならば、もっと憎たらしく、図々しい発言を徹底すべきだが、化け目歴をはじめたばかりのアンジュには難しい。
それに相手を黙らせて仕舞えば情報は取れない。気持ちよく話している今が、絶好のチャンスなのだ。
『貴女がどう言おうと、彼の婚約者は私ですから』
相手が今日の分を言い終わったタイミングを見計らい、一言だけアンジュは返す。牽制程度であっても、強い眼光に気後れした令嬢は立ち去っていくのだから中途半端にも程がある。
それでも明日も、タイミングを見計らってはやってくるに違いない。
『はぁ…どうしよう』
これ以上は無視するだけは得策ではない。
彼女と関係を持っている"アルフレード”について本格的に探りを入れなければならないと、アンジュは考えを改めることにした。