⁂👑☆『 天からの贈りもの』―― 新しい愛を見つけ、私たちを捨てて意気揚々と家を出ていった元夫が やり直したいと縋ってくるのですが──。今更そんな無茶振りを言って困らせないでください~
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「あ~ すまない、何も知らなかったものだから。
 こちらこそ無理言って困らせたよね。
 今日は会えてよかったよ」

「ううん、こちらこそお役にたてなくてごめんね。
じゃあ 私これで失礼するね」

「あぁ、ありがと。気をつけてな」


「うん、あなたもね。帰りのことは大丈夫? 」


「お袋が来てくれることになってるからここで待ってたら大丈夫さ」


「じゃあね」



 私が啓吾とお別れの挨拶をしている間に、浩暉さんは
さっさと先に店を出て、私を待っていてくれた。

          ◇ ◇ ◇ ◇


「終わったね」

 浩暉さんが労ってくれた。



「うん」


「疲れなかった? 」

「少し? かな」

「なんか美味しいものでも食べてかえろ」

「うん」


          ◇ ◇ ◇ ◇


 お袋に連絡を入れたらその辺で時間を潰してたみたいで
すぐに駆けつけてくれた。

 俺は首を横に振った。

「そっか、やっぱり駄目だったのね」

「香織、結婚してた」

「えっ、そうなの?
 再婚早かったのねぇ~。
 香織ちゃんもやるね。
 でも良かったわ。
 なんだか胸の(つかえ)が取れた感じ」


 お袋やっぱりずっと気にしてたんだ。



 お袋には俺の意志を尊重するって公の場では言ってもらってたけど、
離婚()めたほうがいいんじゃないのってこそっと本音も言われてた
からなぁ。

 店のことがあったからかと思ってたけど、それだけでもなかったんだな。
 香織のこと心配してたんだ。


「今更だけど、自分の娘が同じことされたら相手を許すこと
できないと思うからねぇ~。
 香織ちゃんや彼女のご両親にもあわせる顔ないのよぉ~」


「ごめん……」

「しようがないわよ、好きになっちゃったんだものね」


 母親に謝りながら外に出た。


 お袋と俺が見た光景……それは、仲睦まじく手を繋いで歩く香織と
背の高いやさしげな雰囲気の男の姿だった。


 その光景を見ていたら俺は仕事のことを頼みにきたのだが、心のどこかで
もう1度香織とやり直せたらなどと、そんな下心もどこかにあったことに
気付いてしまった。
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