シンデレラ・スキャンダル
ふと目を覚ますと、わたしは再び龍介さんの腕の中にいた。まだ意識は霧の中を漂っているようで、自分がおかれている状況をすぐに把握できない。

動こうと身じろぎした瞬間、龍介さんの(たくま)しい腕によって、さっきまで触れることのできなかった胸元に、ぐっと引き寄せられた。まるで「逃がさない」と言われているようで、鼓動が一つ跳ねる。

もう、これは一種の条件反射みたいなものだ。龍介さんに抱き締められると、わたしは反射的に息を深く吸い込んで、その香りを確かめてしまう。

だって、龍介さんはいつもいい匂いがする。それは、清潔感のある石鹸の香りだったり、微かに残る香水の香りだったり、時には夜の匂いそのものだったりするけれど、どんな香りもわたしを安心させる。

半分寝ぼけた頭のまま、彼の胸元に頬を()り寄せれば、熱を帯びた素肌がひどく気持ちいい。

「あー、ちょっと綾乃さん?」

頭上で、龍介さんの少し呆れたような、それでいてどこか甘い声が降ってくる。

「また匂いかいでるでしょ?」

図星を指されて、わたしは腕の中で小さく身じろぎした。

「……せっけん」

掠れた声で、なんとかそれだけを絞り出す。

「シャワー浴びたからね」

「ん、いい匂い」

今度はもっとはっきりと言葉にする。本当に、清々しい石鹸の香りがする。

彼の腕が、わたしの背中をゆっくりと撫でる。その手のひらの大きさと温もりが、朝の冷え始めた空気に心地よい。
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