シンデレラ・スキャンダル
わたしの気持ちが顔に出ていたのか、龍介さんは少し困ったような、でも愛おしそうな目でわたしを見て、空いている右手でわたしの左手をそっと握りしめた。その温もりが、わたしの不安を溶かしていく。

そして、わたしが彼の肩に頭を預ければ、彼はすっと力を抜き、同じようにわたしの頭に自分の頭を傾けてくれる。この重なり合う時間が、どれほどの安らぎを与えてくれるだろう。

たったそれだけの動作が、わたしにとっては何物にも代えがたい、この上なく幸せな時間になる。


たった十日の間に、龍介さんと過ごすこの時間は、わたしの人生において、かけがえのないものになった。まるで凝縮された夢のような時間。しかし、それも、明日には終わってしまう。

終わらせようと思えば、きっと終わる。東京に戻れば、わたしたちは遠い世界の住人になってしまうのかもしれない。諦めてしまえば、そこで終わる。この夢のような幸福な時間を、ただの「思い出」として、そっと胸にしまうこともできる。

でも、この心の奥底から湧き上がる熱い想いを、無かったことにできる?

彼の存在しない世界に、戻れる?

家につくまでの間、わたしは自分の心の奥深くにある想いを探すように、そっと目を閉じた。今、わたしを包んでいるのは、彼の温もりと、夕陽の残り香、そして、この胸の高鳴りだけ。
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