シンデレラ・スキャンダル
21話 魔法が解けても
◇
家に帰ると、テーブルの上に置いていた携帯電話が久しぶりに震えてメッセージの着信を知らせた。ひらけば、それは卓也からのメッセージで、その名前を見た時に自分がどうしたいのかがわかった気がした。
このまま連絡が来なければ、もう会わずにいられれば、なにもなかったフリをして、龍介さんのそばにいられるかもしれない。そう思った瞬間もあるけれど、今はなにかが違うような気がしている。全てを話すことが正解ではないけれど、龍介さんの心に応えたい。
前を見れば、龍介さんが窓から海を眺めていた。夕陽は海に落ちて、空が七色に変わる。歩み寄り、その背中に抱きつけば、彼は笑ってわたしの腕に触れる。
「龍介さん」
「ん?」
優しい声が返ってきて、わたしの胸は小さく音を立てる。龍介さんの広い背中に頬を寄せて一度目を閉じる。
「日本に帰った後なんですけど……次の会社が決まっていて」
「そうなの?」
龍介さんがわたしの手をほどいて向き直り、わたしを見下ろした。
嘘はつきたくない。全てを伝えることが正しいとは思わない。それでも、今の気持ちを伝えることは大切なのだと思う。龍介さんがそうしてくれるように、真っ直ぐ正直に。
「秘書を……以前お付き合いしていた人の。ディアブロという車の会社なんですけど」
「……そっか」
家に帰ると、テーブルの上に置いていた携帯電話が久しぶりに震えてメッセージの着信を知らせた。ひらけば、それは卓也からのメッセージで、その名前を見た時に自分がどうしたいのかがわかった気がした。
このまま連絡が来なければ、もう会わずにいられれば、なにもなかったフリをして、龍介さんのそばにいられるかもしれない。そう思った瞬間もあるけれど、今はなにかが違うような気がしている。全てを話すことが正解ではないけれど、龍介さんの心に応えたい。
前を見れば、龍介さんが窓から海を眺めていた。夕陽は海に落ちて、空が七色に変わる。歩み寄り、その背中に抱きつけば、彼は笑ってわたしの腕に触れる。
「龍介さん」
「ん?」
優しい声が返ってきて、わたしの胸は小さく音を立てる。龍介さんの広い背中に頬を寄せて一度目を閉じる。
「日本に帰った後なんですけど……次の会社が決まっていて」
「そうなの?」
龍介さんがわたしの手をほどいて向き直り、わたしを見下ろした。
嘘はつきたくない。全てを伝えることが正しいとは思わない。それでも、今の気持ちを伝えることは大切なのだと思う。龍介さんがそうしてくれるように、真っ直ぐ正直に。
「秘書を……以前お付き合いしていた人の。ディアブロという車の会社なんですけど」
「……そっか」