シンデレラ・スキャンダル
「それにしても、秘書やら受付やら、会社の近いところに手を出して、よくトラブルにならないわね」

「……はっ」

 彼は振り返りもせず、自信満々に笑い飛ばすような声で答える。

「どの女にも本気じゃないからじゃない? 俺はみんなに平等だよ。どうせ向こうだって、金目当てだろ。愛情や結婚をちらつかせたりしないから、誰も本気で粘着したりしない。まあ、俺は避妊に気を付けてるから、そうそう『妊娠した』なんて言って捕まらないけどね」

「狙われる側……ね」

「そりゃそうだろ。年に億単位で稼ぐんだから。俺と付き合えば、贅沢な旅行も、ブランド品も手に入る。それを提供する代わりに、彼女たちは俺の欲求を満たす。等価交換だよ」

 卓也は、まるで太陽が東から昇るのと同じくらい当然のことだと言わんばかりに、そう言い放った。「女は金に寄ってくる」——そう断言して(はばか)らない。

 この男はこの社会のヒエラルキーの頂点に立ち、その足元には、莫大な富と権力を求めて女性たちが群がってくる。女性とは、その庇護を求め、甘い蜜を吸うために集まるものだと、心底信じているのだ。

 卓也と一緒にいる間に何度もその言葉を聞いて、いつの間にかわたしもそれを信じていた。我ながら、なんとも流されやすい。そして、なんと浅はかなのだろう。

 大きなため息を一つだけ残して、ボタンも存在しないエレベーターに乗り込んだ。
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