気まぐれ王子と召使い
私が閉じた訳じゃない、勿論、引き出しが自然と閉じることもない。
滝のように冷や汗が体全身を流れるのを感じながら、それでも私は後ろを振り返ることが出来なかった、
「開けっぱにしてたっけ、そういや」
「…………」
「ま、良いや」
淡々と、何事もないように話す世那。
息を忘れるほどの緊張感と、心に空洞が出来たような感覚になる自分が、嫌で嫌でしょうがなかった。
「帰るのか」
世那の顔も見ずに寝室を出ていこうとする。
なにか言葉を返さなきゃと思うのに、喉からは「うん」と2文字しか発することが出来なかった。
「泊まってったら良いのに」
「いや、いいよ。帰るね」
少なくとも、今日は世那の顔が見たくなくなってしまった。
なんでかは分からないし、おかしいのは私なのかもしれないけど、それでも、世那の顔は見たくなかった。
「だから言っただろ、お前の方がガキだって」
私の背中に責めるように投げかけた世那の言葉は聞こえないフリをした。