気まぐれ王子と召使い
「山吹さん」
昼休みの時間、教室のドアから控えめな可愛らしい声が聞こえた。
「あ、桜木先輩…」
そう声をかけると、桜木先輩はどこか気まずそうに笑みを返した。
「世那君は………まだ来てないよね…?」
「まぁ…一週間停学になりましたから…」
「……ごめんなさい、私のせいなの……」
そう言うと、桜木先輩は静かに頭を下げた。
私に頭を下げられても仕方がない。
「先輩が謝る事はないですよ、早崎って奴が…って、あ……いや、その……」
(そう言えば早崎は先輩の彼氏なんだっけ…)
少し気まずくなって口を噤むと、桜木先輩は困ったように笑った。
「……ううん、早崎君……私には凄く優しいの。それこそ世那君とは全然違う……」
優しい人が人を殴ったりするのだろうか。
桜木先輩の言葉には肯定せず、続きの言葉を大人しく待つ。
「でもね、どうしても世那君が忘れられないの」
「忘れられないって……なんでそこまで?」
そんな一週間しか付き合ってない相手を忘れられないって、ちょっと理解し難い。