気まぐれ王子と召使い
私みたいに恋愛経験が全く無い女ならともかく、先輩は世那の前にも付き合ってる人は居たはずなのに。
私の問いに、先輩は微かに笑みを浮かべた。
「だって、こんなに魅力的な人初めてだったから……私、初めて"あんなこと"したんだもん…」
「……"あんなこと"?」
「人に言えないようなこと。早崎君には出来ないのに、世那君には出来たの」
その時の情景を思い出してるのか、桜木先輩は頬を赤く染めクスクスと笑っている。
ゾワゾワ、と全身に鳥肌が立つ。
今日の桜木先輩は、なんだか気味が悪い。
「じゃ、じゃあ、先輩は世那をまだ諦めきれてないって事ですか…?」
「諦められたら苦労しないもの。でも、早崎君が"俺が忘れさせます"って、私に言ってくれたの。だから、それに甘えて世那君の話をしたら……」
「あんな事になってしまったと…」
桜木先輩はキュッと手を握りしめて、悲しそうな表情を作った。
前までは"可哀想な世那の被害者"なだけだと思ってたけど、一癖ありそうな感じだ。
嵐を呼びそうな、そんな気配さえする。
「桜木先輩…世那は恋愛面だとクズですよ。早崎もどうかと思いますけど……少なくとも世那よりは先輩を幸せにしてくれると思います」
「……私、まだ世那君を諦められないの。だから、もう一度だけ、彼と話をしたくて……」
「……先輩……」
これは重症だ。外野の私がとやかく言ったってどうする事も出来ないだろう。
言葉を詰まらせる私に、笑顔を見せると「また来るね」と一言言い残しどこかへ行ってしまった。