気まぐれ王子と召使い
「本当に?」
「そうだっつってんだろ。なんで今更そんなこと掘り返すんだよ」
「なんか桜木先輩が今日来て意味深なこと言ってたから……」
私の言葉に世那は今までの砕けた雰囲気をガラリと変えた。
一瞬で表情が抜け落ちたように表情が無くなると、徐々に不快そうに眉間に皺を寄せて顔を歪ませた。
「……は?なに、あの女お前になんか言ってたの?」
「い、いや、具体的な事はなにも聞いてないけど…」
「………きも……」
重々しく口から紡がれる言葉に冷や汗が流れる。
いつもの感じじゃない。
本気で拒絶反応を示している世那に、"やっぱりなにかあったんだ"と言う事を察してしまって嫌な気分になる。
「い、いやぁ〜、本当、桜木先輩も匂わせるのが好きだよね!駄目だよねぇ、別れた後もそう言うこと言うのは……」
「お前は、あの女から何も聞いてないんだろ?」
有無を言わさない瞳だった。
じーーーーっ、と。嫌に透き通った世那の瞳が私の目を見つめる。
まるで、私の心を見透かそうとしているようだ。
「……は、はい……も、勿論……」
「………………」
喉がカラカラに乾いて、何も悪いことをしてないはずなのにまるで尋問をされてるような気分だ。
世那の目を見ながらぎこちなく口角を釣り上げると、長い沈黙の後、ゆっくりと私から視線が逸らされた。
「今後さぁ」
「はいっ!?」
「もう二度とあの女とは関わんな」
「……理由を聞いても……?」
「あの女はお前に悪影響だ」
底冷えするほど感情の乗らない声と共に、明確に何かが線引きされた気がした。