仮面のアイドルの正体は、記憶を失った少年だった 「記憶を失った少年が、“仮面のアイドル”として生きる運命とは――?」
第0章・Scene9 璃子の揺れる心
通達書を握りしめたまま、璃子は会議室のドアを出た。
ガラス張りの廊下には、夕陽が斜めから差し込み、オレンジ色の光が床に長く伸びている。
その光に照らされて、彼女の握る紙の端がかすかに震えていた。
黒いスーツの袖口に、会議室でかいた汗が冷たく張りつく。
細い肩が上下し、浅い呼吸を繰り返す。足元がふらつき、ハイヒールの音がタイルにかすれた。
喉の奥が熱く、言葉にならないものがこみ上げる。
「……どうして……」
ぽつりと漏れた声は、誰にも届かない。
スタッフたちが何気なく通り過ぎていく中、璃子はひとり無言で立ち尽くしていた。
(私は……何を間違えたんだろう)
浮かんでくるのは、蓮の表情、声、沈黙。
思い出そうとすればするほど、胸の奥がチリチリと痛む。最後に交わした言葉さえ、霞のように掴めない。
(私が――守れなかったの?)
答えはどこにもない。
けれど、すべてが“彼を失った自分のせい”だと突きつけられた気がして、手が震える。
握りしめた通達書が小さな音を立てた。
(……蓮。あなたは、どうして……)
問いかけても、返ってくる声はない。
沈みゆく夕陽に染まる廊下の片隅で、璃子は取り残された影のように立ち尽くしていた。
ガラス張りの廊下には、夕陽が斜めから差し込み、オレンジ色の光が床に長く伸びている。
その光に照らされて、彼女の握る紙の端がかすかに震えていた。
黒いスーツの袖口に、会議室でかいた汗が冷たく張りつく。
細い肩が上下し、浅い呼吸を繰り返す。足元がふらつき、ハイヒールの音がタイルにかすれた。
喉の奥が熱く、言葉にならないものがこみ上げる。
「……どうして……」
ぽつりと漏れた声は、誰にも届かない。
スタッフたちが何気なく通り過ぎていく中、璃子はひとり無言で立ち尽くしていた。
(私は……何を間違えたんだろう)
浮かんでくるのは、蓮の表情、声、沈黙。
思い出そうとすればするほど、胸の奥がチリチリと痛む。最後に交わした言葉さえ、霞のように掴めない。
(私が――守れなかったの?)
答えはどこにもない。
けれど、すべてが“彼を失った自分のせい”だと突きつけられた気がして、手が震える。
握りしめた通達書が小さな音を立てた。
(……蓮。あなたは、どうして……)
問いかけても、返ってくる声はない。
沈みゆく夕陽に染まる廊下の片隅で、璃子は取り残された影のように立ち尽くしていた。