仮面のアイドルの正体は、記憶を失った少年だった 「記憶を失った少年が、“仮面のアイドル”として生きる運命とは――?」
Scene21 優香の胸の内
控室の隅。
遠くでスタッフの笑い声や機材を片付ける音が、ぼんやりと響いている。
優香は椅子に腰を下ろし、膝に抱えた荷物の上に視線を落とした。
璃子と別れた後の余韻が、まだ胸の奥に残っている。
冷たい膜のように胸を覆い、喉の奥まで重くしていく感覚が消えなかった。
(……あの言い方、なんだったんだろう……)
『あなたが知る必要はないわ。彼は今、あなたの大地くんなんでしょう?』
軽い口調だったはずなのに、その言葉だけがずっと耳の奥に張りついて離れない。
(……“知る必要はない”ってことは……
やっぱり、私の知らない“何か”があるってことだよね……)
不安を自覚した瞬間、優香は唇をきゅっと噛んだ。
鏡の中に浮かぶ璃子の笑顔を思い出す。
綺麗だった。けれど――綺麗すぎて、怖かった。
優しげな微笑みの奥、ほんの一瞬だけ影が差した。
(……璃子さんは知ってる。
大地くんの“過去”を……それとも、“本当”を……?)
バッグの中の手帳を無意識に握りしめる。
汗ばんだ指先が、紙の冷たさをはっきりと感じていた。
(……でも……私は、もう“知らないままでいたい”なんて思えない。
――だって、私……大地くんのこと、本当に好きだから)
ただ笑っていられるなら、それでよかった。
でも――知らなかったせいで彼をまた苦しめてしまうのは、もっと怖い。
触れてはいけない場所に、踏み込もうとしている。
そのことが、自分の中でわずかな“裏切り”のように感じられて、胸が小さく軋む。
(……怖い。でも、それでも……知りたい。
あなたのすべてを)
遠くのスタジオでは、まだライトが点いていた。
その揺れる光を、優香はまっすぐに見つめる。
(……たとえ、どんな真実でも……私は、あなたの味方だから。
今度こそ、ちゃんと受け止めたい)
ゆっくりと立ち上がる。
膝の上の荷物を抱き直し、胸の奥のざわつきを吸い込むように、深く呼吸をひとつ。
(璃子さん……あなたはいったい、何を知ってるの?
あの瞳の奥に隠していたものは……なんなの……?)
控室のざわめきの中で、優香の胸にだけ、消えない問いが静かに残っていた。
遠くでスタッフの笑い声や機材を片付ける音が、ぼんやりと響いている。
優香は椅子に腰を下ろし、膝に抱えた荷物の上に視線を落とした。
璃子と別れた後の余韻が、まだ胸の奥に残っている。
冷たい膜のように胸を覆い、喉の奥まで重くしていく感覚が消えなかった。
(……あの言い方、なんだったんだろう……)
『あなたが知る必要はないわ。彼は今、あなたの大地くんなんでしょう?』
軽い口調だったはずなのに、その言葉だけがずっと耳の奥に張りついて離れない。
(……“知る必要はない”ってことは……
やっぱり、私の知らない“何か”があるってことだよね……)
不安を自覚した瞬間、優香は唇をきゅっと噛んだ。
鏡の中に浮かぶ璃子の笑顔を思い出す。
綺麗だった。けれど――綺麗すぎて、怖かった。
優しげな微笑みの奥、ほんの一瞬だけ影が差した。
(……璃子さんは知ってる。
大地くんの“過去”を……それとも、“本当”を……?)
バッグの中の手帳を無意識に握りしめる。
汗ばんだ指先が、紙の冷たさをはっきりと感じていた。
(……でも……私は、もう“知らないままでいたい”なんて思えない。
――だって、私……大地くんのこと、本当に好きだから)
ただ笑っていられるなら、それでよかった。
でも――知らなかったせいで彼をまた苦しめてしまうのは、もっと怖い。
触れてはいけない場所に、踏み込もうとしている。
そのことが、自分の中でわずかな“裏切り”のように感じられて、胸が小さく軋む。
(……怖い。でも、それでも……知りたい。
あなたのすべてを)
遠くのスタジオでは、まだライトが点いていた。
その揺れる光を、優香はまっすぐに見つめる。
(……たとえ、どんな真実でも……私は、あなたの味方だから。
今度こそ、ちゃんと受け止めたい)
ゆっくりと立ち上がる。
膝の上の荷物を抱き直し、胸の奥のざわつきを吸い込むように、深く呼吸をひとつ。
(璃子さん……あなたはいったい、何を知ってるの?
あの瞳の奥に隠していたものは……なんなの……?)
控室のざわめきの中で、優香の胸にだけ、消えない問いが静かに残っていた。