七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~
傷口によく効く傷薬を塗りこみ、丁寧に包帯を巻いていった。
この薬はレイラも傷を負った時によく塗ってもらうのだが、けっこう傷口に沁みる。大の男ですら痛い痛いと悲鳴を上げるほどに。それなのに、この王子は呻き声一つ上げず、こんこんと眠っている。夢見が悪いのか、時々眉根に深いシワを刻みながら。
「……この人、どんなつらい目に遭ったんだろう……?」
おおよそ戦いとは無縁であろう、高貴な身分である王族の彼がこんなに深手を負うほどの出来事とはどんな事態なのだろう? このポートレプカは王都から離れているので、あちらの情報がなかなか入ってこないのだ。
父は今日、王宮の財務担当のグリウスと会っていた。何か聞いてはいないだろうか。
レイラは枕元に置かれた手桶の冷たい水の中で、彼の額に当てていてぬるくなった手拭いを絞りなおした。そして、再び彼の額に当てなおすと――。
「…………ん……?」
「……あ、気がついたみたいだね。よかった」
王子がようやく意識を取り戻した。目を開けた彼は、ボンヤリとした意識のままで部屋の中を見渡し、レイラと目が合う。
「ここは……どこだ……? 君は……」
「ここはポートレプカにあるあたしの家。そしてあたしの名前はレイラ・ブライス。〈ゴールドバロン海賊団〉の船長、バリー・ブライスの娘で副船長だよ。あんたはルイス王子だよね? 王都の沖から流されてきたんでしょう?」
「レイラ、君は海賊……なのか。でも、どうして僕が王子だと……」
「悪いとは思ったけど、あんたの身分を調べるために服を検めさせてもらったのよ。そしたら、ポケットにこれが入ってて。それって王族の紋章でしょう?」
レイラは自分の着ていたベストのポケットにしまっていた王家の証を彼に返した。
「ああ、そうだ。僕はこの国の第一王子にして正統な王位継承者、ルイスだ。でも、そうか……。都の沖からこんなに遠いところまで流されてきてしまったのか」
紋章を受け取った彼――ルイス王子は、レイラの目を真っすぐに見つめて改めて自らの身分を明かした。
「ねえ、王子。都で一体何が起きてるの? 一国の王子がこんなに深い傷を負わされて、こんな遠くまで流されてきてるなんてただ事じゃないでしょう? 一体何があったの?」
レイラはただ、真実を知りたいだけだった。海賊ではあっても人の道を外れたような行為はしない、むしろ困っている人がいると助けたいと思っていたからだ。
「実は……、王都では今、反乱が起きつつあるんだ。僕もその反逆者に命を狙われ、殺されかけた。君に助けられなかったら、今ごろ死んでいたかもしれない」
この薬はレイラも傷を負った時によく塗ってもらうのだが、けっこう傷口に沁みる。大の男ですら痛い痛いと悲鳴を上げるほどに。それなのに、この王子は呻き声一つ上げず、こんこんと眠っている。夢見が悪いのか、時々眉根に深いシワを刻みながら。
「……この人、どんなつらい目に遭ったんだろう……?」
おおよそ戦いとは無縁であろう、高貴な身分である王族の彼がこんなに深手を負うほどの出来事とはどんな事態なのだろう? このポートレプカは王都から離れているので、あちらの情報がなかなか入ってこないのだ。
父は今日、王宮の財務担当のグリウスと会っていた。何か聞いてはいないだろうか。
レイラは枕元に置かれた手桶の冷たい水の中で、彼の額に当てていてぬるくなった手拭いを絞りなおした。そして、再び彼の額に当てなおすと――。
「…………ん……?」
「……あ、気がついたみたいだね。よかった」
王子がようやく意識を取り戻した。目を開けた彼は、ボンヤリとした意識のままで部屋の中を見渡し、レイラと目が合う。
「ここは……どこだ……? 君は……」
「ここはポートレプカにあるあたしの家。そしてあたしの名前はレイラ・ブライス。〈ゴールドバロン海賊団〉の船長、バリー・ブライスの娘で副船長だよ。あんたはルイス王子だよね? 王都の沖から流されてきたんでしょう?」
「レイラ、君は海賊……なのか。でも、どうして僕が王子だと……」
「悪いとは思ったけど、あんたの身分を調べるために服を検めさせてもらったのよ。そしたら、ポケットにこれが入ってて。それって王族の紋章でしょう?」
レイラは自分の着ていたベストのポケットにしまっていた王家の証を彼に返した。
「ああ、そうだ。僕はこの国の第一王子にして正統な王位継承者、ルイスだ。でも、そうか……。都の沖からこんなに遠いところまで流されてきてしまったのか」
紋章を受け取った彼――ルイス王子は、レイラの目を真っすぐに見つめて改めて自らの身分を明かした。
「ねえ、王子。都で一体何が起きてるの? 一国の王子がこんなに深い傷を負わされて、こんな遠くまで流されてきてるなんてただ事じゃないでしょう? 一体何があったの?」
レイラはただ、真実を知りたいだけだった。海賊ではあっても人の道を外れたような行為はしない、むしろ困っている人がいると助けたいと思っていたからだ。
「実は……、王都では今、反乱が起きつつあるんだ。僕もその反逆者に命を狙われ、殺されかけた。君に助けられなかったら、今ごろ死んでいたかもしれない」