七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~
その人物はレイラと変わらないくらいの年齢の、見目麗しい美丈夫だった。
さらさらとした艶やかな金髪が、打ち寄せる波に洗われてキラキラと月明かりに照らされている。
「……大丈夫、呼吸はあるから生きてるみたいだけど。この人、一体どこから流されてきたんだろう……?」
潮の流れを計算するより、彼が一体何者なのかを調べる方が早い。レイラは彼の体を検める。と、彼の左腕に刃物で斬りつけられたような深い傷があることに気づいた。流れ出た血はすでに海水で洗い流されているが、この深手が原因で意識を失っていることは容易に察しがつく。
何か、この青年の身分が分かるものはないのか――。彼の衣服を調べたレイラは、ズボンのポケットからあるものを見つけて愕然となる。
「これは……、王家の紋章!? ということは、この人は王子様……ってこと?」
つまり、彼は現グレティン王国国王の第一王子、ルイスということ。彼は王都レスボラの沖から流されたのだと分かり、レイラは何だかきな臭いにおいを感じ取った。
「王子がこんな大ケガをして、こんな辺鄙なところまで流されてくるなんて只事じゃなさそう。一体、都で何が起きてるんだろう……?」
このことは、自分一人の胸の内にしまっておくには事が大きすぎる。だからといって、父や海賊団の仲間たちがこの王子に危害を加えないという保証はどこにもない。まるで、オオカミの群れにヒツジが一頭迷い込んできたような状況なのだ。
「……とにかく、生きてると分かった以上、傷の手当てをしないと。まずはウチに連れて帰って、母さんには事情を話してしばらくウチで休ませてあげよう」
レイラは彼の濡れた体を軽々と持ち上げ、背負って家へと引き返した。細身だがこれでも女だてらに海賊稼業をしているので、力だけはあるのだ。
それに王子も細身で、全身ずぶ濡れであることを差し引いても体重が思った以上に軽いから、というのもあった。
* * * *
レイラが家に着いた時、母のロージーは娘がずぶ濡れの青年を背負っていることに大変驚いていた。
「母さん、この人ケガしてるのよ。とりあえず、あたしの部屋のベッドに寝かせるから、二階まで運ぶの手伝って。それと、薬箱を持ってきて」
「分かったわ。お父さんはまだ帰ってきてないから……。今のうちに運びましょうね」
父のバイスがまだ酒場にいてよかった。もし帰ってきていたら、ケガ人だということもお構いなしに叩き出されかねない。
どうにか母と二人で、青年を二階にある自分の部屋まで運ぶと、レイラは彼の左腕の傷を手当てし始めた。
さらさらとした艶やかな金髪が、打ち寄せる波に洗われてキラキラと月明かりに照らされている。
「……大丈夫、呼吸はあるから生きてるみたいだけど。この人、一体どこから流されてきたんだろう……?」
潮の流れを計算するより、彼が一体何者なのかを調べる方が早い。レイラは彼の体を検める。と、彼の左腕に刃物で斬りつけられたような深い傷があることに気づいた。流れ出た血はすでに海水で洗い流されているが、この深手が原因で意識を失っていることは容易に察しがつく。
何か、この青年の身分が分かるものはないのか――。彼の衣服を調べたレイラは、ズボンのポケットからあるものを見つけて愕然となる。
「これは……、王家の紋章!? ということは、この人は王子様……ってこと?」
つまり、彼は現グレティン王国国王の第一王子、ルイスということ。彼は王都レスボラの沖から流されたのだと分かり、レイラは何だかきな臭いにおいを感じ取った。
「王子がこんな大ケガをして、こんな辺鄙なところまで流されてくるなんて只事じゃなさそう。一体、都で何が起きてるんだろう……?」
このことは、自分一人の胸の内にしまっておくには事が大きすぎる。だからといって、父や海賊団の仲間たちがこの王子に危害を加えないという保証はどこにもない。まるで、オオカミの群れにヒツジが一頭迷い込んできたような状況なのだ。
「……とにかく、生きてると分かった以上、傷の手当てをしないと。まずはウチに連れて帰って、母さんには事情を話してしばらくウチで休ませてあげよう」
レイラは彼の濡れた体を軽々と持ち上げ、背負って家へと引き返した。細身だがこれでも女だてらに海賊稼業をしているので、力だけはあるのだ。
それに王子も細身で、全身ずぶ濡れであることを差し引いても体重が思った以上に軽いから、というのもあった。
* * * *
レイラが家に着いた時、母のロージーは娘がずぶ濡れの青年を背負っていることに大変驚いていた。
「母さん、この人ケガしてるのよ。とりあえず、あたしの部屋のベッドに寝かせるから、二階まで運ぶの手伝って。それと、薬箱を持ってきて」
「分かったわ。お父さんはまだ帰ってきてないから……。今のうちに運びましょうね」
父のバイスがまだ酒場にいてよかった。もし帰ってきていたら、ケガ人だということもお構いなしに叩き出されかねない。
どうにか母と二人で、青年を二階にある自分の部屋まで運ぶと、レイラは彼の左腕の傷を手当てし始めた。


