七つの海を渡る愛 ~Love Ocean~

海賊の娘

 ――アレイン海は今日も波穏やかだ。
 グレティン王国いちの港町・ポリア沖にはいくつもの商会から何十隻という商船が航行している。

 そのさらに沖に、異彩を放つ一隻の船がある。それこそが海賊団〈黄金の男爵(ゴールドバロン)〉の持つ海賊船である。

「――キャプテン、お嬢、見えましたぜ!」

 マストから、乗組員ユナンが一隻の商船を指差して叫んだ。

「うん、間違いないよ。あれが〈ミエール商会〉の船だね。……船長」

 彼から「お嬢」と呼ばれた紅一点、レイラが甲板(かんぱん)から望遠鏡を覗きながら頷き、この船のキャプテンに指示を仰ぐ。

「野郎ども、ただちに配置に着け! 面舵(おもかじ)いっぱい、あの船に横付けするんだ! ぐずぐずするな!」

「「「「「あいあいさー!」」」」」

 この船の副船長であるレイラは、長い赤髪をなびかせて船首に立ち、乗組員たちに指示を飛ばす。

「ユナン、あんたはそのまま船に残ってマストから見張りを続けて! ドリーは全員分の武器を準備して! マッジは(イカリ)を降ろす準備! 舵取りは任せたよ、ガゼリ!」

「へい、任しといてくれ!」

 頼もしく頷いたベテラン二等航海士のガゼリに、レイラと船長のバリー・ブライスは満足げに頷く。


 ――レイラ・ブライスはキャプテン・バイス・ブライスの一人娘である。彼女は幼い頃からこの船に乗り、人生の半分以上の時間を海の上で過ごしてきた。現在、十八歳だ。

 父がキャプテンを務め、彼女も名を連ねる〈ゴールドバロン海賊団〉は悪徳商会の船ばかりを狙い、彼らが所有する財産を略奪している。
 その一部は海賊団の(ふところ)に入るが、ほとんどをグレティン王国の貧困層の人々に分け与えている。そのため、彼らのことを〝義賊〟だと呼ぶ者たちも少なくない。

 王国法では、海賊団は 見つかればすぐ海軍に捕縛されて裁かれ、一人残らず絞首刑に処されるが、レイラたちだけは例外とされているらしい。貧しい民を救済しているその行為を国王から認められ、略奪行為は見逃されているらしいのだ。


「――よし、よぉーーし! 目標の船に横付けた。者ども、錨を降ろし、乗り移れ! もたもたするな!」

「「「「「イェッサー!」」」」」

 レイラの指示どおり、ユナン一人だけはマストに残り、海賊旗を掲げた。レイラを含むあとの乗組員たちとキャプテン・ブライスはドリーと呼ばれた若い男の乗組員からカットラスとピストルを受け取り、相手の船に跳び移る。
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