愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
「……お前、俺の言葉にいちいち反論するのやめろ」
「反論ではなく、会話をしています」
「会話のつもりならもう少し敬意を見せたらどうだ?」
「敬意なら行動で示しているつもりです。私はただ、思ったことを口にしているだけなので、不快にさせてしまったのなら謝ります、すみません」
「……本当に生意気だな」
「よく言われます」
「普通なら俺に言い返すことなんてしない」
「言い返しているつもりはないです。私は専属メイドとして、巴様のことを沢山知りたいので、会話をしたいだけです」
「馬鹿馬鹿しい。俺はメイドと馴れ合うつもりは無い。お前は決められたことをしていればそれでいい。これからも生意気な態度を取り続けるつもりなら、如月に言ってクビにするぞ」
「それは傲慢です。粗相をしてしまったのなら仕方が無いと受け入れますけど、そんな一方的な言い分では納得出来ないですもの。ですが、私が思うに巴様は、そんなことで私をクビにはしないですよね?」

 私がそう問いかけた瞬間、巴さんの指がわずかに止まる。

「巴様?」
「……お前、本当に嫌な女だ。お前と話すと頭が痛くなる……」
「お薬お持ちしましょうか?」
「必要無い」

 全く堪えない私を前に小さくため息を吐いた巴さんは少し不貞腐れてしまったようで、窓の外に視線を向けてしまう。

 そんな彼の横顔を窓から差し込む夕陽が照らすと、その表情は普段と違ってどこか子供のように見えた。
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