愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
「……巴様、コーヒー、冷めますよ」
「今日はぬるいコーヒーが飲みたい気分なんだ」

 いつも熱いのが良いと言うくせに、やっぱり彼は素直じゃない。

「それは失礼しました。それでは私は一旦下がりますので、御用があればまた呼んでください」
「必要無い。夕飯までここへは来るな」
「かしこまりました、それでは失礼致しました」

 もっと話をしていたい気持ちはあるものの、彼の仕事の邪魔になってはいけないと、そっぽを向いたままの巴さんに声掛けをしてから部屋を後にした。

 食事やお菓子を運ぶ他、巴さんからの呼び出しが無い空いた時間は、他のメイドさんたちと共にお屋敷での家事をこなしていく。

 掃除や洗濯が主なのだけど、広いお屋敷の掃除はとにかく大変だし、沢山の人が生活をしているので洗濯物の数も多い。

 メイド長の羽川さんの指示に従ってお手伝いをさせてもらっているけど、私以外みんなベテランということもあって、とにかく仕事が速い。

 寧ろ、私が手伝わないほうが早く終わる気すらする。

 周りはみんな、「侑那ちゃんは巴様のお世話が最優先なんだから、気にすることは無い」と言ってくれるけど、あまり役に立てていないことを思うと何だか申し訳ない気持ちが強くなる。

「さてと、頑張るぞ!」

 少しでも役に立てるよう色々な仕事を覚えたい私は巴さんの夕ご飯の時間まで、羽川さんに指示された雑用を精一杯こなしていった。
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