愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
「巴様、お菓子をお持ち致しました」
「入れ」
「失礼致します」

 十五時のおやつの時間になり、お菓子を届けに来た私は部屋へと入る。

「ショコラケーキになります」

 席に着いた巴さんの前に、ケーキの乗ったお皿とフォークを置いて、紅茶の準備をする。

 全てが揃い、巴さんが食べ始めるのを見届けた私はドアの側へ下がっていく。

 すると、二口程食べた巴さんがこちらに視線を向けて、

「高間とは、随分親しいみたいだな?」

 突然、そんな言葉を投げ掛けてきた。

「え?」
「少し前、楽しそうに話していただろう? 勤務中に大声で」
「巴様、厨房にいらしていたのですか?」
「たまたま通りがかっただけだ」

 巴さんが厨房の前を通りがかり、私と高間さんが話している場面を目撃した――その話を聞いた時、厨房で聞いた物音は巴さんが出した音だったのでは無いかと悟る。

 けれど、それには触れずに彼の話を黙って聞いていくと、

「お前の実家の店は、Roseの近くにあるようだが、経営が上手くいっていないのか?」

 恐らく、高間さんとの会話を聞いて気になったのだろう。

 巴さんはお店のことについて質問をしてきた。

「……はい、恥ずかしながら、経営難で、それを助ける為に、ここで働かせてもらっております」

 思えば巴さんにはお店についてや私が働く理由について詳しくは話していなかった。

 でもそれは、巴さんが私のことをいちいち知りたいと思わないだろうと思っていたから。

 まさか巴さんの方から聞いてくるだなんて思わずに驚いていると、

「場所に問題があるなら移転をすればいい。金が必要なら、上澤家(うち)で少しばかり援助するように、親父に頼んでやる」

 とんでもないことを口にしてきた。
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