愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
 その日の夜、早めにバイト先のコンビニに着いた私は開始時間までまだ少し余裕があるので、事務室でパンをかじりながらスマホで高収入のバイトの求人情報を漁っていると、一つ、物凄く惹かれる案件が目に入る。

(住み込みの家政婦……この住所の上澤(うえさわ)家……って、もしかしてあの、上澤のこと、かな?)

 私が注目したのは住み込み家政婦で月収額は60万に頑張り次第では上乗せも有りという普通のバイトじゃ考えられない金額だった。

(未経験歓迎、年齢は二十歳~二十五歳、上澤家子息の身の回りのお世話が中心……つまりは専属ってことか)

 上澤と言えば、この辺りは勿論、国内で知らない者は居ない。

 上澤ホールディングス。

 数々の業種に手を出すも次々と成功を納め、今では国内に有数の会社を所有する大企業グループだ。

 そんな財閥の住み込み家政婦となれば、確かに金額も高くて当然だろうけど、どうだろう。

 申し込み期限を見ると、残り一週間。

 面接に来る際は無職の状態が好ましいと書いてある。

(無職って……今働いてる所を辞めてから面接をしろってこと? もし採用されなかったら、どうしよう……)

 必ず採用される訳じゃないだろうに、働き口を切ってから面接に臨むというのはリスクが有るけれど、受かればひとまず一家が暮らすには十分な金額を貰えるし、住み込みならば自分の分の食費が浮くので今以上に両親に楽をさせてあげられる訳で、私はなかなかその求人募集から目が離せなかった。
< 3 / 59 >

この作品をシェア

pagetop