愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心
 善は急げと、高間さんも協力してくれて、私と父の三人で新作ケーキ作りに取り掛かる。

 高間さんは自分の仕事が終わってからうちのお店に通ってくれて、父と二人、あれこれアイデアを出し合いながら話題性の出るケーキを考えて試作にも付き合ってくれていた。

 何十回もの失敗を重ねつつも出来上がったのは、【ルミエール】という、“光”をテーマにしたケーキ。

 ルミエールはフランス語で光のことで、今の暗い状況でも光を見つけたい、という想いを込めて父が考案した。

 透明感のある柑橘のグラサージュが宝石のように光輝き、トップには細いホワイトチョコの光の筋、中心には淡い黄色に輝くコンフィチュールの層がまるで光を纏うような見た目で、これならばSNS映えにも繋がると確信した。

「……これできっと、店を立て直せるよね」
「ああ、そうだといいね」
「大丈夫ですよ、こんなに素敵なケーキなら、お客さんもきっと、来てくれますよ」
「高間さん、本当にありがとう」
「君のおかげだよ、ありがとう」
「いえ、僕はあくまでも、手伝いをしただけですから」

 連日仕事の後に試作ケーキを作りを手伝い続けて疲れているはずなのに、高間さんは嫌な顔一つせずに付き合ってくれた。

 こんなに一生懸命で人の為に動いてくれる素敵な人、他にはいない。

 高間さんとのことを真剣に考えよう、そう思えた瞬間だった。
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