愛を知らない御曹司は専属メイドにご執心

嫉妬

 再び上澤家で働き始めた日の夜。

 勤務を終えて自室に戻ろうと廊下を歩いていると、昼間すれ違った新人の男の子が向かいから歩いて来る。

 昼間同様軽く会釈をして通り過ぎようとした、その時ーー

「あの!」

 男の子に声を掛けられた私は足を止めて彼の方へ身体を向けた。

「はい?」
「あの、もしかして新人の方ですか!?」
「えっと、一応今日から働かせてもらっていますけど、以前にもこちらで働かせてもらってました」
「あ、もしかして、来栖さんですか? 巴様専属メイドの!」
「はい、そうです」
「やっぱり! あ、俺、先週から運転手として働かせてもらってる本堂(ほんどう) (みさき)って言います!」
「ご丁寧にどうも。私は来栖 侑那です。よろしくお願いします」
「こちらこそ! あの、来栖さんっていくつ?」
「二十二歳ですけど」
「あ、俺の一個上だ! 歳が近い人いなさそうだなって思ってたから嬉しいな! あ、タメ口でもいい?」
「あ、うん、それは別に、構わないけど……」
「ありがとう! 俺、まだ入ったばっかで勝手もよく分からないからさ、色々聞いてもいいかな?」
「うん、分からないことは聞いて。私で分かることなら教えるから」
「ありがとう! それじゃあ、また明日!」
「うん、また」

 私より一つ歳が下の本堂くん。

 高間さんの時のことがあるから、異性との距離感には気をつけようと思いつつも、年齢が近い子が近くに居るのはやっぱり嬉しい。

 心機一転、上澤家で頑張らなきゃと意気込んだ私は意気揚々と部屋へ戻って行った。
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