運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 どんなに小さな抵抗でも、この家を出ることは「負け」だと思っていた。ここを失えば、母と祖父母の愛情までも、あの人たちに踏みにじられてしまうような気がして、どうしても耐えられなかったのだ。
 
 けれど――今、私のお腹の中には、もしかしたら小さな命が宿っている。その事実を意識した瞬間、これまでの価値観は音を立てて崩れていった。私は、この子を守らなければならない。思い出や家よりも、もっと大切なものがある。
 
 この子の命――。

「私が……守らなきゃいけないんだよね」
 心の中でそう呟いたとき、不思議なほど迷いは消えていた。『逃げなさい。あなたが幸せでいることの方が、私にとってずっと大事よ』――もし母が生きていたら、きっとそう言っただろう。
 
 私はこの家を出る。奪われてもいい。思い出は私の心の中に生き続けているのだから。けれど、この命だけは、絶対に奪わせはしない。

< 113 / 328 >

この作品をシェア

pagetop