運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 逃げる前、私は押し入れに隠しておいた貯金用のキャッシュカードをバッグに入れていた。少しずつ移してきた金額は、マンスリーマンションを借りるくらいには十分だった。割高でも、当面の拠点が必要だ。

 使い慣れない新しいスマホの画面を見つめながら、私はひとつの名前を思い出す。――紗江。番号を暗記していて本当に良かった。
【紗江、スマホの番号が変わったの。時間があるとき連絡欲しい】
 送信してすぐ返事が来るはずもないと思っていたのに、画面が光り、文字が現れる。

【ねえ、どうしてたの? 連絡つかないし、会社にも来ないし、心配してたのよ! 無事? 今すぐ行きたいけど、仕事終わってからでもいい? 場所だけ教えて】

 その文字を見た瞬間、胸の奥で張り詰めていたものがほどけ、小さく息が漏れた。私はすぐにホテルの名前と部屋番号を送り、続けて検索モードを開く。
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