運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 ひと息ついてから、副社長室の扉を軽くノックする。やや低めの声で「どうぞ」と返事が返ってきた。
 頭を下げて部屋に入ると、眉間にしわを寄せた副社長がデスクに腰掛けており、その表情を目にした瞬間、私も自然と背筋を伸ばして表情を引き締め、もう一度静かに頭を下げた。

「いつも悪いね」
 そう声をかけてきた副社長は、五十代に入ったばかりで、濃紺のスーツをきちんと着こなす落ち着いた雰囲気の人だ。若いころからこの会社に身を置き、店舗での現場経験を積みながら、本社へと異動し、たたき上げでここまで昇り詰めてきた人物であり、祖父が健在だったころには深く信頼を寄せられていたと聞いている。また、父――いまの社長のことも古くから知っている数少ない社員のひとりだった。

「いえ……」
 私はそう小さく返しつつ、副社長の顔を正面から見た瞬間、すぐに察した。

 ――これはきっと、先日問題になったある店舗の件だ。
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