運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 けれど、いまの私は――どこか〝身を潜めて生きている〟という意識があって、身元が明らかになるようなものをあえて持ち歩かないようにしていた。
 その選択が、今回ばかりは裏目に出てしまったのだ。

「このたびは……本当にご迷惑をおかけしました。結菜、こっちにおいで」
 朝倉さん、ましてや優希くん――そんな風に呼ぶことはできず、名前を避けたまま謝罪の言葉を口にする。
 結菜に向けて手を伸ばした瞬間、鋭い痛みが肩を走り思わず息を呑んだ。
 そのとき、優希くんが何か話そうとした瞬間、違う声が聞こえた。

「肋骨は二本、ヒビが入っています。肩も強く打っているので、当面はあまり動かさないようにしてください」
 その声と同時に、カーテンが揺れ誰かが入ってくるのがわかった。

武藤(むとう)です。朝倉病院の整形外科の医師で、あなたの治療を担当させていただきました」
< 142 / 328 >

この作品をシェア

pagetop