運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 その瞬間、琴音は勝ち誇った笑みを浮かべたまま、追い打ちをかけるように言う。
「最初から素直にそう答えればいいのよ。ちゃんとシミ取り、使いなさいよ」

 私は返す言葉もなく、指先に触れた布の冷たさだけが妙に印象に残った。まるで、体温を吸い取るかのようなその感触に、言いようのない虚しさを覚えながら、ワンピースを持ち直す。

 鬼の形相とは、きっとこういう顔のことを言うのだろう――そんな皮肉めいた考えがふと浮かんで、私は無言のまま踵を返し、ゆっくりと階段へ向かって歩き出した。

「ちゃんとやるわよ、言われたことは」
 ようやく絞り出した声は、自分でも驚くほど空虚で乾いていた。
何度も繰り返してきたやり取り。

それに慣れきってしまった自分の心が、一番冷え切っていることに気づく。
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