運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける

　フィッティングルームまで備わった部屋の豪奢さに圧倒されながらも、スタッフと一緒に中へ入る。差し出されたのは、淡いサーモンピンクのドレスで、デコルテが美しくカットされており、柔らかな色合いの中に気品を漂わせていた。

「私の母も……亡くなるまでは、いつも服を一緒に選んでくれていました」
　懐かしい記憶が不意に胸をよぎり、カーテンの向こうにいるお母様に届くか届かないかの小さな声で呟いた。

「そうなのね。きっとお母様も楽しかったのだと思うわ。今の私と同じように」
　その優しい言葉に、胸がきゅっと締め付けられると同時に、温かな感情がこみ上げる。母との時間がこんなにも早く終わってしまうとは思っていなかったけれど、それでも確かに心の中には、かけがえのない思い出として残っているのだ。

「ありがとうございます」
　ドレスに袖を通し、フィッティングルームを出ると、お母様はすでにアクセサリーやメイクまで手配を始めてくださっていた。

「さあ、明日は優希や、あの眼下な人たちを驚かせてやりましょう。晴香ちゃんが一番きれいよ」
　お母様の力強い言葉に、私は深々と頭を下げて微笑んだ。

「これからは本当の母親だと思ってくれると嬉しいわ」
　明るく朗らかなお母様だったから、優希くんは重圧を感じながらも優しい人になったのだろう。
　心の底からそう思った。