運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 それが――彼との出会いだった。
 それから数日後。別の教科の課題に取り組んでいたとき、ふと背後から声がした。
『今日は悩んでないんだ』
 顔を上げると、あのときの彼が立っていた。
 思わず頬が熱くなり、『苦手なのは数学だけです』と慌てて答えた私に、彼はふっと笑って言った。
『いつも頑張ってるから、俺も頑張らないとな』
 不意に告げられたその言葉が、どれほど嬉しかったか。
 
 その日から、図書館で会うたびに少しずつ話をするようになり、気づけば彼の姿を探すのが日課になっていた。
 静かな夕暮れの図書館に響くページをめくる音と、横顔。
 
 あの時間が、いつの間にか、私の中で特別な思い出になっていた。
 それ以来、私はずっと――彼に恋をしていた。
 しかし、母が他界し、麻子さん親子がこの家に現れてからというもの、私の生活は一変した。
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