運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
「化粧室、先に行く?」
 先ほどの私の言葉を気遣ってくれたのだろう。私は小さく頷き、化粧室へと向かった。

 鏡に映る自分の表情が、どんな感情を宿しているのか自分でもわからない。
 いろいろなことがありすぎたが、まさか初恋の人と食事をすることになるなんて――。
 考えだしたらいつまでもここにいてしまいそうで、私は慌てて髪を整え、軽くメイクを直した。
 大きなガラス窓の前で、背を向けている優希くんを見つけ、私は小さく息を整えた。

「お待たせしました」
 そう声をかけると、優希くんはゆっくりと振り返り、ふわりと微笑んだ。
 彼が私のもとへ来ると同時に、革靴の軽やかな足音とともに、ひとりの男性が静かに近づいてきた。年のころは三十代前半ほどだろうか。背筋をぴんと伸ばし、オールブラックの制服を完璧に着こなしたその姿からは、プロフェッショナルな気配がにじみ出ている。言葉を交わすより先に、この場にふさわしい洗練を備えた人物であることが伝わってきた。

「お食事でよろしいですか?」
 声までも凛としていたその人の問いに、「ええ、お願いします」と優希くんは短く答えると、ちらりと私の方へ目をやり、ほんのわずかに微笑んだ。
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