運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 蔵の中は、薄暗い電球がひとつだけぶら下がり、小さな窓からわずかな光が差し込むだけ。古びた反物や埃をかぶった置物が無造作に積まれ、空気はよどんでいた。咳き込みながら背を丸めていると、ぎい……と重い扉の軋む音がした。
 そこに立っていたのはみちるだった。手には水と、簡素な非常食のようなものを抱えている。

「……しばらく、これで耐えてください」
 ただそれだけを淡々と告げ、無表情のまま扉を閉めてしまった。

 トイレもなく、時間の感覚すら奪われていく。どれほど閉じ込められていたのだろう。窓の外はいつの間にか闇に沈み、夜が訪れていた。

 息苦しさと孤独に限界を覚え、私は開くはずもない扉を両手で叩き、声を振り絞った。
「うるさいわね」
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