運命の恋をした御曹司は、永遠にママと娘を愛し続ける
 精一杯の強がりでそう答えると、琴音は満足げに「それならいいわ」とだけ言い残し、麻子さんとともに蔵をあとにした。

 お母さん……。

 何度、心の中でその名を呼んでも、答えてくれる声が返ってくるはずはない。
 どうして、こんなことになってしまったのだろう。そんなに私が憎いの? 存在そのものが邪魔なの……?
 私たちがのうのうと生きてきたことが、彼女たちには許せなかったのかもしれない。確かに、母が亡くなるあの日まで、私は知何も知らず幸せだった。

 父のしたことも、娘である私に責任があると言われれば、返す言葉はない。けれど、初めから琴音を受け入れないつもりなどなかった。むしろ受け入れようと努力してきたはずだ。ただ――その気持ちは、相手には届かなかった。
 胸の奥がじくじくと痛み、思わず両腕で自分を抱きしめた。
 あの日以来、どれほど必死に耐えてきたのだろう。母と祖父母の残したものを守るために、ただそれだけを支えに生きてきたのに――。

 枯れたようなため息を漏らしながら、私は自分のベッドに身を投げ出した。ふかふかのはずの寝具も、この瞬間ばかりは牢獄の一部のように重く感じる。
 顔を枕にうずめると、あふれそうな涙が布地に染み込み、声を押し殺すように嗚咽が漏れた。
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