貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「さぁ、バリー、お仕事だよ。
勝手に穴を掘っちゃだめだからね」

ジェシカはバリーを連れて、階段を下りると、
ガレージには、ジープ仕様の高級車が一台止まっている。

タイヤがめちゃくちゃデカイし、
ここの御当主は、山道をガンガン走るアウトドア派なのかもしれない。

ジェシカはバリーを放すと、ガレージの階段を昇りながら思い出した。

父親はジェシカと弟を、よく山奥のキャンプ場に連れていってくれた。

ガタガタの山道を、ギャーギャー騒ぎながら・・・あれは遠い過去の想い出。

館は2階まで窓に明かりがともり、森の闇と対比して美しい。

あの明かりの下にいる人は、どのような夕食をとったのだろうか。

自分の目の前にあるビニール袋に入ったパンの切れ端を眺めた。

オーブントースターがあったから、焼いてトーストにすればいいか。

ジャムかバターがあれば、もっと素敵なのだけれど。
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