貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
くず野菜の活用法
「おはようございます。料理人のカンです。門を開けてください」
バリーの首輪にリードをつけていると、ガレージに設置してあるインターホンから声が聞こえる。
「わかりました。少々お待ちください」
ジェシカはすぐに、門の施錠解除のボタンを押した。
小型車がガレージのそばで止まり、
アジア人らしき中年の男が降りてきた。
「おはようございます。食材を持ってきているので、裏の鍵を開けてもらえますか?」
料理人のカンは、少しイントネーションが違う。
「警備担当のジェシカといいます。
こっちは相棒のバリー。よろしくお願いします」
ワォン
バリーが吠えたので、カンは後ずさりをした。
「大きなワンコですねぇ」
「ええ、頼りになりますよ。鍵を開けますね」
ジェシカが走り出すと、すぐにバリーが追い越した。
カンが野菜や卵、パンや牛乳など詰め込んだ段ボールを、重そうに抱えて歩いてくる。
厨房に入ると、手際よく段ボールから食品を出してステンレスの配膳台に並べた。
「ソーセージ・生ハム・パテ・・・チーズはブルーとゴーダ・モツァレラ・・・すごいですね」
ジェシカは驚嘆の声を上げた。
こんなに高級食品が並んでいるのを見るのは、初めてだ。
「これって・・・全部ここの御主人の朝ご飯ですか?」
「そうですね。朝の分です」
「でも、・・・一人分ですよね」
ジェシカが目を丸くしていると、
カンは素早く手を洗い、エプロンをつけた。