貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
バリーはおとなしく寝そべって、ジェシカの掃除が終わるのを待っていた。

「お疲れさま。食べてね」

ジェシカはバリーの頭を軽く叩くと、古ぼけた帆布のザックから、ジャーキーの入っているビニール袋を出した。

もう一つのビニール袋には、パンのみみがたくさん入っている。

伏せの姿勢でジャーキーを前足で抱えて食べているバリーの横で、ジェシカはパンのみみをもそもそかじった。

お湯がわいたら、紅茶を入れて・・・そうすれば冷たくなった体を温めることができる。

シュン、シュンシュン

ケトルが、騒がしい音を立て始めた。

ザックから、マグカップとティーバックの紅茶を取り出そうとすると、いくつかの封筒が床に落ちた。

「あああ・・」

封筒には赤字で「請求書」の文字が目立つように書かれている。

「もっと、時給の高い仕事を見つけなくちゃ・・・」

ジェシカは相棒に聞かせるように、苦い紅茶を一口飲んだ。

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