貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ラブストック警備保障会社
<ラブストック警備保障会社>

「給料の前借はできないぞ。ジェシカ・バリントン」

ランス所長の声が、事務所内に響いた。

「そもそも・・・もう少し生活を考えたらどうなんだ?」

ジェシカは、大柄な海兵隊上がりの所長の前で身をすくめた。

「弟の学費だって、バカ高い私立ではなく、公立に転校させればいいだろう。
それに、バリーだって、そろそろ現役を引退しなくちゃならない歳だ。
医療費もかかるだろうし、動物愛護団体に譲渡するって手もある」

「それは・・・絶対ダメです!!」

ジェシカのバリーの首輪をつかむ手に、力が入った。

亡くなった父の唯一の形見が、バリーなのだ。
そして、訓練を受けたバリーがいるからこそ、警備の仕事ができる。

「そのっ・・時給の高い深夜勤務を・・・お願いします!!」

「ふーーーん、だが、お前は格闘技や銃器の扱いもできないし。
正直、クライアントも夜間勤務に女性をあてるのは、不安がることも多い。」

「ですから、バリーは警察犬としての訓練を受けていますし、行方不明捜索も・・・」

ランス所長は、冷たくなったコーヒーをぐびっと飲んだ。

「そもそも、深夜帯も含め機械警備になっているから、需要がすくなくなっているのが現実だ」

「そうですよね・・・」

他では、バリーと一緒に働くことはできない。

< 3 / 77 >

この作品をシェア

pagetop