貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
ジェシカの事情
<ジェシカの事情>
居間には大きな暖炉があり、朝は火が入っているので暖かい。
アレックスは、ソファーに座り、煙草に火をつけた。
「そこに座りなさい」
命令されたので、ジェシカは横のソファーに座ったが、クッションで体が埋もれてしまいそうだ。
「君・・・ええと名前は・・・」
「ジェシカです。ジェシカ・バリントン」
カートリッジが代わりに答えたので、ジェシカは同意のうなずきをして、
鼻をすすった。
「ジェシカ、コーヒーは・・・
ミルクと砂糖は?」
カートリッジの抑揚のない声が響いた。
「両方・・・お願いします・・・」
注がれるコーヒーのアロマが、鼻腔をくすぐる。
かすかにバニラの香りも、混じっていて、温かいカップは、冷たくなったジェシカの手と心を緩めてくれた。
「君は・・・」
アレックスが口を開くと、
カートリッジがすぐに、ジェシカの履歴書と、ラブストック警備の契約書類を手渡した。