貧困乙女、愛人なりすましのお仕事を依頼されましたが・・・
「お金が必要なんです。
弟の学費の支払いがあるので」

ジェシカはうつむいたまま、コーヒーの香りを思いっきり吸い込むと

「その、そのために・・・
できるだけ生活費を、特に食費を切り詰めています」

この人は大金持って所長が言っていたけれど、なんで自分の貧乏話をしなくてはならないのか・・・

ジェシカは胃が痛くなる気分だ。

アレックスは、履歴書をめくった。

「なるほど、弟はバートン校にいっているのか。あそこは伝統校だ。
私立で男子校、しかも寄宿制なら、金がかかる」

「はい。両親が亡くなったので、今は私が保護者になっています。
弟は成績もいいし、獣医希望なので、なんとか叶えてあげたいと思っています」

アレックスは窓から朝日が差し込み、うつむき加減のジェシカの横顔を、照らしているのを見ていた。

ワン・・ウォワン・・

バリーの声が聞こえる。
朝ご飯の催促だ。

ジェシカは、くっと顔を上げて、アレックスを見た。

「お騒がせして、申し訳ありません。
すぐに所長に連絡をして、交代の人を頼むようにお願いします。

私は、バリーにご飯をやらなくてはならないので、これで失礼します」

そのまま立ちさろうとするのを、
アレックスは手で制した。
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